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2025.2.18
耳鼻咽喉科専門医に聞く!睡眠の質を改善する花粉症の治療法とは?

春先になると、くしゃみや鼻水、鼻づまりに悩まされる花粉症。特に、寝る前や就寝中に症状が悪化すると、睡眠の質が著しく低下し、日中の集中力やパフォーマンスにも影響を及ぼします。そこで今回は、睡眠の質を改善するための花粉症治療について、耳鼻咽喉科専門医の視点から解説します。
目次
対症療法:抗アレルギー剤の使用

花粉症の症状を和らげるために最も一般的なのが、抗アレルギー剤(抗ヒスタミン薬やロイコトリエン受容体拮抗薬など)を使用する対症療法です。これらの薬は、花粉によるアレルギー反応を抑え、くしゃみや鼻水、鼻づまりを軽減します。
近年では、眠気の少ない第二世代の抗ヒスタミン薬も多く登場しており、日中の仕事や運転への影響を最小限に抑えることが可能です。しかし、症状を根本的に治療するものではないため、花粉の飛散が多いシーズンは継続的な服用が必要となります。
また、点鼻薬や点眼薬を併用することで、局所的な症状の緩和も期待できます。特に、ステロイド点鼻薬は鼻づまりを効果的に改善し、睡眠中の呼吸を楽にする助けになります。
根本治療:舌下免疫療法とは?

毎年花粉症の症状に悩まされ、花粉症を根本的に治療したい方におすすめなのが、舌下免疫療法です。これは、アレルゲン(スギ花粉とダニのみ)を少量ずつ体内に取り込み、免疫を慣れさせることで、アレルギー反応を軽減する治療法です。
舌下免疫療法は、毎日薬を舌の下に投与し、約3年~5年継続することで効果を発揮します。治療には時間がかかりますが、症状の改善や薬の使用量を減らすことが期待できます。
この治療法は、花粉の飛散時期を避けて開始する必要があるため、開始時期は注意が必要です。花粉の飛散前に治療を開始し、来年の花粉症時期に備えましょう。
注射による治療:ゾレア(オマリズマブ)とは?
重症の花粉症患者に対しては、「ゾレア(オマリズマブ)」という注射薬を用いた治療法があります。ゾレアは、アレルギー反応の引き金となるIgE抗体を抑制することで、症状の発現を防ぐ効果があります。
この治療法は、通常の抗アレルギー剤では十分な効果が得られない場合に適応されるため、医師と相談の上で検討することが推奨されます。また、通常のアレルギー検査に加えて、IgE抗体の濃度を測定する採血検査も必要になります。月に1~2回の注射を行うことで、症状を大幅に軽減できる可能性があります。
ゾレアの治療に適している方
・内服薬を飲んでも、くしゃみ・鼻水がとまらない・鼻がつまるといった症状が治まらず、1日中ティッシュが手放せない方。
・眠気などの副作用が出やすく、もっと強力な効果が期待できる薬剤に変更・増量したいけど出来ない方。
・内服、点鼻薬、点眼薬など十分な治療を行っていても、症状が軽くならない方。
また、花粉症シーズンに大事なイベントごとがある方でどうしても症状を抑えたい方などもおすすめします。
適用になるかどうか、医師に相談してみましょう。
花粉症をしっかり治療して、快適な睡眠を!

花粉症の症状を放置すると、鼻づまりによる口呼吸やいびきを引き起こす可能性が高まります。適切な治療を受けることで、睡眠の質を向上させ、日中の活動もより快適に過ごせるようになります。
また、花粉症を部屋に持ち込まないことも重要です。花粉の多い日は外出を控え、帰宅後は衣類をしっかり払ってから室内に入る、こまめに掃除をする、寝室の空気清浄機や加湿器を活用するなどの対策も有効です。
室内の湿度を50%以上にすることで花粉を床に落とし、舞い上がらないようにすることも有効です。
自分に合った治療法を見つけるために、まずは耳鼻咽喉科専門医に相談し、適切な診断と治療を受けましょう。
当院では、今回ご紹介した治療法すべて院内で行えますので、気になる方はお気軽にご相談ください。
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コラム監修者

井坂奈央
Dクリニック東京ウェルネス 睡眠・SAS外来 センター長